共同研究の目指すもの
共同研究の目指すもの
九州大学 応用生理人類学研究センター
レジリエンスデザイン部門准教授藤 智亮
『脳若トレーニング』との出会い
「『脳若トレーニング』は、とってもいい!」「みんな、みるみる元気になっていくのがわかるんですよ~!」「でもまだ足りない。もっともっといい『脳若トレーニング』にしていきたいんです!」 共同研究はこのような話から始まりました。株式会社サムライトの光岡社長の情熱を強く感じたその日のことは、いまでも鮮明に覚えています。
さて、株式会社サムライト社による『みつおか式 脳若トレーニング』の講座の特徴は、iPadを使って楽しく認知機能向上のためのトレーニングをおこなうことです。このトレーニングの内容は、当然ながら、認知機能の向上または維持に効果的であることが望まれます。この効果を確かめるために、株式会社サムライト社ではこれまでに、『脳若トレーニング』の受講前後のさまざまなデータを比較検討することによって、トレーニングが認知機能(短期記憶・遅延記憶)の向上または維持に効果的であることを科学的に明らかにしています。
共同研究の目指すもの
九州大学との共同研究では、さらに効果的または魅力的なトレーニングの内容(コンテンツ)を開発することを目指しています。研究題目は「認知機能のレジリエンス向上のためのコンテンツ開発に関する研究」です。
研究ではまず、現在実施されている『脳若トレーニング』の現場を徹底的に分析し、受講者の行為(視線の動き、頭の動き、iPadの操作、講師(コミュニケーター)との会話、受講者同士の会話など)とトレーニング効果との関係を明らかにし、それらを知識データベースとして整備します。そうすることによって、例えば、「コミュニケーターの説明後、すぐにiPadを操作した」という行為が増えたら「理解力」が向上したといえるといったように認知機能を定量的に判断できるようになります。この判断結果は、すぐに受講者に伝える(フィードバックする)ことができるので、効果を実感しながらトレーニングを進めることが可能になります。一方、受講者の行為とトレーニング効果との関係がわかれば、認知機能の向上に効果的な行為を誘発するような仕掛けをもつコンテンツを開発することができます。つまり、効果的かつ魅力的なトレーニングコンテンツの開発ができるようになるのです。
研究成果に基づく新しいコンテンツの開発
本研究のゴールは、『脳若トレーニング』で実施する効果的かつ魅力的な認知機能向上プログラムを創出することです。具体的には、「コミュニケーターと一緒に、楽しくiPadを使いながらトレーニングを実施するためのコンテンツ」を提案したいと考えています。このコンテンツには、受講者の行為をセンシング(自動計測)する機能を実装する予定です。受講者の行為から、構築した知識データベースを基に、「理解力」や「記憶力」の向上・維持の程度を定量的に把握するという試みです。結果はすぐにフィードバックできるので、受講者はトレーニングの効果をすぐに実感することができます。このことは、トレーニング意欲の向上につながります。一方、この仕組みはコミュニケーターにとっても有用です。トレーニング効果をすぐに定量的に把握できるので、受講者の状況に応じて臨機応変にトレーニング内容を変更することができるのです。
今日、地球気候変動や少子高齢化などさまざまな問題が顕在化してきました。「九州大学 応用生理人類学研究センター」は、これらの問題に対して具体的な解決策を探るために設置された研究センターです。超高齢社会である日本において、認知症予防を目的とした研究は大変重要で有意義です。認知機能の低下という「マイナス」要因を発生させないための準備=『脳若トレーニング』、認知機能が低下したときに「マイナス」をできるだけ少なく抑えるための活動=『脳若トレーニング』は、まさに当研究センターが取り組んでいるレジリエンスデザインの考え方を具現化したものです。共同研究を通して、多くのシニアの皆さんの笑顔・イキイキ・ワクワクを応援して参りたいと思っています。